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『白鹿亭奇譚』:巨匠クラークによるSF小噺集

アーサー・C・クラーク

 1980(1957) 『白鹿亭奇譚』平井イサク() 早川文庫SF

 

白鹿亭綺譚 (ハヤカワ文庫 SF 404)

白鹿亭綺譚 (ハヤカワ文庫 SF 404)

 

 

 巨匠クラークによるSF小噺集。ユーモラスながら科学的知識に裏打ちされた、15の短編作品が収められています。

 

 舞台はアメリカのどこかにあるという居酒屋「白鹿亭」、科学者や作家が集まるこの居酒屋では毎晩のようにグラスの上を奇妙な話題が飛び交います。なかでも名の通ったほら吹き男ハリー・パーヴィスは、世界各地でさまざまな秘密の仕事に携わっていたという触れ込みで、聴衆たちに奇想天外な物語を聞かせては煙に巻いてゆくのです。本書の収録作品はそれぞれが独立したものですが、すべてこの人物が語ったストーリーという設定になっています。収録作の一覧は本文の末尾に掲げておきます。

 

 いずれについても筋は言っただけでネタバレになってしまうので、残念ですが控えておこうと思います。個人的には、太平洋上の孤島でシロアリに文化を教えようとしている日本人科学者を主人公にした「隣の人は何する人ぞ」や、気弱で蘭の育成だけが趣味の男と女丈夫の叔母をユーモラスに描いた「尻込みする蘭」、ふとした事故で地球上に無重力場できてしまった「登ったものは」あたりが好きでした。最後にほら話が現実とリンクする構成も上手です。

 

 60年も前の作品ですので古さを感じさせるところもありますが、クラークの長編の元ネタになっていたり、いまを予見しているような作品も含まれていたりして興味深いです。ただ小品集ですので、センス・オブ・ワンダーを期待して読むと肩透かしを食らうかもしれません。むしろ大作や仕事の合間に、頭の転換として少しずつ読むようにするのがよろしいのではと思います。

 

 

収録作品:

みなさんお静かに

ビッグ・ゲーム・ハント

特許出願中

軍拡競争

臨界量(クリティカル・マス)

究極の旋律

反戦主義

隣の人は何する人ぞ

とかく呑んべは

海を掘った男

尻込みする蘭

冷戦

登ったものは

眠れる美女

アーミントルード・インチの窓外放擲